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孫子の戦略論(計篇第一〜謀攻篇第三)

ヨーロッパ語訳の『孫子』と金谷注を底本にして、ちょっと書いてみたものをさらに加筆して、上げてみます。解説めいたものは書かなくてもwikiか何かを少し読めば分かると思うので、割愛しますが、そのうち書くかもしれないし、そこは気分。

CiNii 論文 -  18世紀在華イエズス会士アミオと満洲語

CiNii 図書 - アミオ訳孫子 : 漢文・和訳完全対照版

初期のフランス語訳は満洲語訳の『孫子』を底本にしているという話を上記の新居先生の論文(ネットで読める)で触れているのを見て、どうも筑摩書房から出版されているようなので、そんなことも調べたいなあ、と思う今日このごろ。

 

 

計篇第一

 戦争とは、国家において回避することができない重要な問題である。戦争を始めるにあたって指導者が考慮すべき要素は、「五道七計」に象徴される客観的・具体的な要素の算定・評価と、開戦後における戦略目標(『孫子』においては呉王の制覇)を達成する敵の意表をつく作戦行動、すなわち「詭道」に代表される実地の戦術を導く作戦術の二つである。そこで国家の指導者は、戦争を開始する際の作戦会議において具体的な敵国と我が国の戦争を実際にシュミュレーションし、そこで先述の要素を具体的に検討し、勝利の見込みがたった時、開戦の決意を固めるべきである。

作戦篇第二

 (呉王の制覇という)戦略目標の達成のためには、必要最低限の目標を達成するための極力短期間の軍事行動にとどめ、不必要に戦果を拡大するための戦争が長期化させ、戦費を浪費するような作戦をとることは許されない。(諸国を制覇するために)多数の兵士と物資を動員し、補給線が長大となり、輸送コストが高くなる他国の国土での戦争において、一回の作戦において多くの戦略資源を浪費することは許されない。そのため、作戦においては戦略資源を浪費する戦術を取らず、鹵獲兵器や食料の利用や捕虜の味方への転用(春秋時代当時に捕虜の待遇を定めた規定などない)をはかるなど勝てば勝つほど強くなるような戦術を取ることが重要である。

謀攻篇第三

 そうであるがために、戦略目標を達成するために、必ず犠牲を伴うコストの高い軍事的手段を用いることは最善の選択肢とは言えない。そこで、外交など非軍事的手段によって敵国の戦略目標・同盟関係を打ち破ることが、軍事的手段によることより優先されるのである。戦争においても、極力敵軍の降伏を促す作戦・戦術を採用し、自らが不利な状況ならば、自らの戦略資源を保全する作戦・戦術をとり、決して無理な勝利を狙おうとしてはならない。また、戦争においては後方の国家の指導者と前線の司令官の間には相互補完関係が成り立つ。ゆえに、指導者は、司令官には有為の人材を選抜し、戦略目標を示したならば彼の作戦に関しては干渉してはならない。以上の戦略論を総括すると、敵味方の諸事を知悉した指導者の指導下にある国家は戦略目標を達し、そうでない国家は達しないのである。

参考文献

小野繁 訳『フランシス・ワン仏訳 孫子』1991 葦書房

金谷治 訳注『新訂 孫子』2003 岩波書店